Rose

    − Rose −


   すっと尖ったその先端を

   擽るように風が撫でると

   小刻みに揺らいで

   まるで身震いするよう


   硬く窄んだその蕾も

   少しずつ和らぐ空気の中で

   そっと帯を解くように

   緩む姿は恥ずかし気に映る


   青味がかった薄い表皮は

   まるで熱を帯びるかの如く

   徐々に徐々に色づき

   芳醇な香りを放ち始める


   優しく伝う雫に濡れると

   一気に弾け昇り詰めたように

   全ての花弁を拡げた


   熟れた淑女の艶やかな姿に

   人だけでなく虫までが

   惹き付けられて目を留める



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さくらんぼ

    − さくらんぼ −



   初めて訪れた少女の家で

   初めて目にした赤い果実


   そっと指で摘まむと

   赤くツルリと透けるようで

   光を浴びると星が写り込む


   まるで宝石みたいで

   口に放るのも忘れて

   見とれるように眺めた


   手を下げると少し遠くの

   もうひとつの赤に気づき

   ドキリとして

   僕の顔まで赤くなった


   口に含むと甦る

   さくらんぼと少女の面影

   甘くてほろりと酸っぱい

   少年時代の想い出の味



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望郷

       − 望 郷 −


   早く其処を飛びしたかった

   辛い思い出ばっかりだったから


   早く其処を逃げ出しかった

   苦しみの中でもがいていたから


   都会(まち)に生きる希望を探して

   此処しか無いと思い続けて生きた

   早く其処を捨て去りたかったから


   がむしゃらに突っ走って振り返ると

   人生半分以上を都会(まち)で過ごした


   疲れ果てボロボロになった今

   懐かしい其処の情景が脳を過(よぎ)り

   安らぎと安堵の気持ちが湧き上がる


   其処に居たはずの人々は消去され

   海を眺めたさざ波と潮騒だけが

   今も鼻に耳に残っている感覚


   あの頃も一人で海を眺めていた

   とっておきの秘密の場所で

   寂しくなんか無かった

   心が解放され無に近づけた


   葛藤を叫んでも波音がかき消し

   キラキラと反射する水面に癒された


   今でも癒してくれるだろうか

   今でも心が解放されるだろうか


   秘密の場所をこっそり尋ねてみたい

   これが望郷というものならば

   私は其処を捨てられなかったのだ



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六十五億の孤独

    − 六十五億の孤独 −


   今、僕は寂しい

   周りに大勢の人々が居るのに

   誰も話しを聞いてくれないから


   今、僕は辛い

   周りの大勢の人々が居るのに

   共感してくれる相手はいないから


   今、僕は苦しい

   周りに大勢の人が居るのに

   無責任なことばかり言うから


   寂しくて辛くて苦しいから

   僕は逃げ出したい気持ちになる


   今、僕は哀しい

   上辺だけ取り繕って善人のふり

   周りの大勢はそんな人ばかり


   それが分かってしまうから

   僕の心は癒されず孤独をさ迷う


   誰か相手を想って話しを聞いて

   誰か相手に耳を傾けて頷いて

   誰か相手を想い遣って口を開いて


   人は皆、他人に理解されず叫ぶ

   心の中で……僕だけじゃない

   地球上の六十五億の孤独がある


   孤独の色は

   哀しみの青 辛さの黒 苦しみの赤

   そして宇宙で孤独な地球は美しい



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大切な人

      − 大切な人 −


   いつも君の心は僕の傍に居て

   一緒に笑ったり泣いたり

   互いの気持ちに共感できる

   かけがえのない無い大切な人


   そんな君が突然、僕の前から消えた日

   暫くは信じられず呆然と立ち尽くしたよ


   穏やかに眠るようなその顔の瞳は

   もう二度と開くことがないなんて


   何故だ…… なんで……

   僕の口が勝手に呟く


   僕は何を失くしたのだろう

   君との他愛もないやり取りが頭の中で

   走馬灯のように次々と浮かんでは消える


   胸が張り裂けて心に大きな穴を空けられて

   そこに哀しみと遣りきれなさが流れ込む


   この哀しみをどうすればいい

   この遣りきれなさをどうすればいい


   涙を流せば薄れ行くのか

   時が経てば薄れ行くのか


   そんなことある訳ないじゃないか

   だって君は戻って来ないのだから

   だって君を忘れることはできないから


   僕一人では乗り越えられないよ

   僕一人では潰されちゃうよ

   君は僕には大切な人だから


   誰かに励まして欲しいなんて言わない

   誰かに同情して欲しいなんて思わない


   ただ傍に居てこの哀しみを辛さを

   共有して見守ってくれるだけでいい

   そんな存在が今の僕には必要なんだ


   この哀しみを乗り越えられたら

   僕は君の分まで

   他の人に何かしてあげられるかな


   この辛さを乗り越えられたら

   僕は君だと思って

   人に優しくできる勇気が持てるかな




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